タイ、バンコクと周辺に非常事態宣言 首相訪米中止
【バンコク=高橋徹】タイ政府は7日、バンコク中心部で続く反政府デモが過激化してきたと判断、市内とその周辺に非常事態を宣言した。中心部の繁華街を占拠するデモ隊を治安当局が強制排除する可能性がある。これに先立って、政府はアピシット首相が核安全保障サミット参加のため10~15日に予定していた訪米を中止するとも発表。混乱収拾に全力を挙げる。
非常事態宣言が出されるのは昨年4月以来。同首相はベトナムのハノイで8~9日に開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議についても、2日連続で日帰りで出席する。
首相は訪米について、これまで「反政府デモが10日まで続くようなら中止も検討する」としていた。ASEAN首脳会議には8日午後にハノイ入りし、同日深夜にバンコクに戻る。9日も早朝にバンコクをたち、午後3時前にバンコクへ戻る強行日程とする。
タクシン元首相支持派団体「反独裁民主統一戦線」(UDD)が率いるデモ隊メンバー約200人は7日午前、閣議が開かれた国会議事堂の正門前に押しかけた。一時は門扉を破壊して建物内部に乱入したが、治安部隊などとの交渉の結果、建物外へ撤収した。
地元メディアによるとアピシット首相は閣議を終え、すでに国会内にいなかったが、残っていたステープ副首相が軍のヘリコプターで脱出した。
デモ隊は「セントラルワールド」「サイアム・パラゴン」など大型商業施設が集まる市街地一角を引き続き占拠。周辺のショッピングセンターなどは5日連続で臨時休業を余儀なくされている。混乱の広がりに政府は非常事態の宣言が必要と判断したもようだ。