タイの反政府デモ、日本人カメラマン死亡
300人近い負傷者
【バンコク=高橋徹】タイ政府は10日、首都バンコクで市街地を占拠し反政府集会を続けるデモ隊の強制排除に乗り出した。デモ隊の拠点の一つである首相府近くの交差点に治安部隊を投入。火炎瓶を投げるデモ隊に、治安部隊はゴム弾や催涙ガスを使っている。地元メディアなどによると、この衝突でロイター通信の日本人カメラマン1人を含む計7人が死亡。双方に300人以上の負傷者が出たもようだ。陸軍報道官は同日夜の記者会見で「デモ隊が治安部隊を銃撃している」と述べた。
一方、デモ隊の主力拠点がある大型商業地区でも、治安部隊が包囲を開始。デモ隊は車両で路上をふさぎ抵抗している。同日夜には首相府に投げ込まれた爆弾が爆発。建物の一部が壊れた。
今月7日にバンコクと周辺5県に非常事態を宣言した後も、政府はデモ隊との衝突につながる強制排除に慎重だった。ただデモ隊は抗議活動を一段と先鋭化しており、政府の対応に批判も出ていた。アピシット首相は前日のテレビ演説で「13日からのタイ正月(ソンクラン)までにデモを終息させ、事態を正常化する」と説明していた。
バンコク市内を走る高架鉄道(BTS)は10日午後、混乱に備えて運行を停止するとともに全駅を閉鎖。バンコク最大のショッピングセンター「サイアム・パラゴン」など周辺の大型商業施設も営業を打ち切った。
タクシン元首相支持派団体「反独裁民主統一戦線」(UDD)率いるデモ隊がバンコクで大規模集会を開始してほぼ1カ月。陸軍報道官によると市内2カ所の集会拠点に、この日は計約1万2000人が残っていた。